チャーチの靴とは
僕のお気に入りの靴の一足がチャーチのディプロマットです。
チャーチは1873年に創業されたイギリスのノーザンプトンに工場を持つメーカーで、2000年頃にプラダの傘下に入りました。ちなみに1886年に創業されたチーニーは1966年にチャーチの傘下に入っています。
さて、このチャーチについては過去にフルブローグのチェットウィンドと現在はセミブローグのディプロマットを所有。ラストは173というもので、プラダ傘下になる前から長年愛されてきていた73ラストをより現代的に変更したラストとなります。
フレアパンツの流行と英国靴
自分の記憶の中では、2003年頃からロサンゼルスを発祥とする“セレブ系デニム”が流行し、それまではアメカジとしてリーバイスやエドウィンを中心としていた「ジーパン」から、ストレッチが効いて脚長効果があるブーツカットの流行がありました。
ペーパーデニムやセブンフォーオールマンカインド、ヤヌークやノティファイ、シマロンのデニムやパンツが流行となり、ローライズかつフレアなデニムが全盛となりましたね。トゥルーレリジョンは特に時代を代表するブランドだったと思います。2002年の日韓ワールドカップで大人気になったベッカムが、EVISUのジーンズを穿いていたこともありデニムが普及する土台が整ってたのかもしれません。
裾がフレアになると必然的に今までの靴では裾とのバランスが取れなくなり、靴がロングノーズ化していったわけです。カジュアルの急進的な流れがクラシックにも広がり、2005年頃からはビジネスシューズにもロングノーズ化の流れができていたと思います。
英国靴にも一気にロングノーズ化の流れ
当時はロングノーズかつソールが薄いマッケイ製法の靴がよりエレガントとされており、ワールドフットウェアギャラリーで展開されていた、ロブスやボリーニ、コードウェイナー、マグナーニといった非英国靴や高価格帯ではサントーニのようなスタイリッシュな靴が全盛であり、グッドイヤーウェルトでラウンドトゥの朴訥とした顔つきの英国靴は見向きもされなくなってきたわけですね。
ファッションのスリム化が進んでいく中で、2000年にはチャーチの新ラストとして173ラストが登場し、イギリス靴のロングノーズ化の流れを作ったのはクロケット&ジョーンズの337ラスト(パリラスト)だと思います。その後はエドワードグリーンの82ラストなど、それまでのシェイプとは異なるスマートなイギリス靴が持てはやされるようになりました。
チャーチ ディプロマットの魅力
話が逸れてしましましたが、僕が“一生モノ”だと感じているチャーチのディプロマットの特徴について述べてみようと思います。
173ラストは日本人の足にも合う
まずはラスト173が自分の足によく合っていることがあります。チャーチやチーニー、ロークやバーカーも標準は「Fウィズ」であり、愛用している173もFウィズです。それを聞くと『自分は足が細いから履けない』というような声も聞こえてきそうですが、他社のEウィズとほぼ変わらずむしろ甲は低い印象です。
革質とデザイン
革質に関してはチャーチの場合は同価格帯の靴と比べると硬くてそこまでキメが細かくない革を使っているように思えます。クロケット&ジョーンズのハンドグレードの革質と比較してみても、キメ細かさや見た目の高級感は負けているような気がしますね。
とはいえ、決して安っぽくは見えることなく大きめのパーフォレーションと合わせてどこかカントリーシューズのような野暮ったさや男臭さを醸し出していて、履きこめば履きこむほど革の光沢も増し愛着が湧いてくるタイプの靴だと思います。
合わせやすいエボニーカラーとシェイプ
そして気に入ってるポイントの一つが“エボニー”という少しだけアンティーク調のブラウンの色味ですね。ジャケパンでもスーツでもジーンズにもコットンパンツにも何でも合わせられる色合いであり、野暮ったい中にもラストがシャープなためどんな格好でもパンツを選ばないということも大きいです。
ストレートチップの“コンサル”ではカジュアルには合わせづらいですし、フルブローグの“チェットウィンド”ではスーツには少し合わせづらいと思えます。そんな中での“ディプロマット”の広い守備範囲は非常に魅力的であり、黒と茶色のディプロマットを持っていれば広範囲なシチュエーションに対応できると考えており黒の購入も検討中です。
ソールと履き心地
ソールもチャネル仕上げにはなっておらず、オープントラック仕様で高級感は劣りますがチャーチのカスタムグレードのキャラクターを考えればおかしいと思うことはありません。ソールはエドワードグリーンやクロケット&ジョーンズのオークバークのソールとは違い、かなり硬めの履き心地です。革質の硬さとも相まって全体的にはとても硬質な靴と言えます。なので最初は靴擦れに苦しむんですよね。。
それとこの革は磨きも難しいです。他の靴と同じように磨いても、表面はテカテカになりますが革の内面が乾燥しているような仕上がりになってしまいます。自分でも満足のいく仕上がりにはならないため、定期的にプロに磨いてもらうようにしています。黒だとまた違うのかもしれませんが、エボニーは磨くのが難しいですね。でも奇麗に磨けると鈍い光沢と履き込んだ雰囲気になるので、傍から見ても『あれはチャーチだな』と分かるような仕上がりになります。
チャーチはプラダ傘下になって、ちょっと奇抜なモデルを出したり革小物を出したりと総合ブランドへの変革をしているのかもしれませんが、カスタムグレードの靴については変わらずに販売し続けてくれているのは非常にありがたいことですよね。
長く履ける一足を探している人にオススメ
初めての英国靴にはオススメするのは難しいですが、何足か英国靴をお持ちで長く履ける靴を探している人には、チャーチのディプロマットは胸を張ってオススメできる名靴と言えます。
クラシックながらも現代的なラストのシェイプで、普遍的な朴訥とした顔つきをしているにも関わらず履けば上品な足元に仕上がる数少ない靴だと思います。
守備範囲も広くスーツからジャケパン、カジュアルに至るまでシチュエーションを選ばずに履くことができ、靴自体も屈強であり一足持っておけば間違いのない一足です。
もっとヘビーデューティーに使用したいという方には、表面を樹脂コーティングし雨にも強いポリッシユドバインダーカーフがオススメですよ。
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