ジョンロブの靴といえば既成靴の世界では革質の良さや作りの良さ、そしてブランド性も含めてナンバーワンの紳士靴と言えます。歴史については語りませんが、現在はエルメスのグループに属しています。
日本での展開としては百貨店の靴売り場での販売と百貨店の中でのショップ展開、丸の内や六本木に見られるようなオンリーショップも展開しています。ジョンロブは商社やセレクトショップが代理店として運営しているわけではなく、ジョンロブグループの子会社である株式会社ジョンロブジャパンが国内では展開しているというわけですね。
ニュークラシックラインとは
現在自分自身が所有しているジョンロブの靴は、プレステージラインのフィリップ2、コアコレクションのウィリアム、ニュークラシックラインのアドレイを素材違いで2足の計4足を所有しています。
フィリップ2やウィリアムについては様々なメディアやブログで紹介されているため後回しにするとして、今回はニュークラシックラインについて手持ちの靴を交えながら記していきたいと思います。
靴を作るときには1枚の大きな革から傷の少ない部分を狙って革をカットしていきます。プレステージラインの革は各部のパーツを大きく取り、靴1足を5~6枚の革(パーツ)で仕上げます。当然ジョンロブの厳しい検品を通った極上の革は大きなパーツをカットし終えたあとにはまだまだ使える部分を残して廃棄処分、もしくは財布や革小物に生まれ変わることになります。
松田社長によれば所謂“高級紳士靴”と呼ばれる靴は15枚~16枚のパーツを縫い合わせていることが一般的であるとのことで、いかにジョンロブが革を贅沢に使用しているかが分かります。
その中でもホールカットやダブルモンクのチャペルはアッパーを1枚の革で仕上げているため、いかに贅沢に革を使っているかは一目瞭然ですね。
ご紹介するニュークラシックラインはプレステージライン、もしくはコアコレクションで使用する部分を取った後の革の端材を利用して作られた靴です。
“端材で作った”といってもそのパーツの数は1足当たり15枚~16枚程度とのことで一般的な高級靴に劣っているといったことはありません。企業として“サスティナブル・ディベロップメント(持続可能な開発)”を追求するために打ち出した戦略的なモデルということだそうです。
その分値段はかなり抑えられていて、税抜きで13万円だったと記憶しています。
ローファー“ADLEY”
所有しているローファーのアドレイは2017年に購入した1足がスエードで、新しく買い足したものがダークブラウンの表革です。スエードは非常に毛並みが良く全てが同じ方向に流れができます。履き皺の色が抜けてきたりといったこともなく、特別なメンテナンスをすることも無く履き続けていますが気を遣わないで履ける貴重な一足です。
ラストは0215でローファー専用ラストとなっており定番のロペスに使用されている4395に比べるとほんのりロングノーズなエレガントなラストといったイメージ。サイズ感はロペスと同じです。
ソールの仕上げについてはヒドゥンチャネル仕上げとなっており、コアコレクションと全く同じ仕上げ。ウィリアムと比較してみても底材は同じものであり手抜きをしている様子は一切なし。昨今の高級靴の値上がりが尋常じゃないこともあり、ジョンロブとしてもエントリーラインを設定したかったというところと、サスティナビリティという点が合致したプロダクトではないでしょうか。
圧倒的な革質
スエードについては手持ちのサントーニやチーニーの硬い毛足の短いスエードとは一線を画しており比較にならないというのが正直なところ。それ以上に表革のモデルの革質は素晴らしく、恐らくは最上級のカーフである“オックスフォードカーフ”ではないかと思います(店員さんは分からないとのこと)。
手持ちのフィリップ2のミュージアムカーフに比べても圧倒的に肌理が細かく、クリームを少し入れるだけでも鈍い輝きが革の内側から出てくるようなイメージです。ウィリアムは厚めの革が使われているため比較対象としては違いますが、ウィリアムの革ともまるで違います。
コロナ禍で靴が売れていないのか、幸運にもこのモデルはセールで購入することができました。セールには結構な数の靴が残っており、以前から気になっていたシボ革でラバーソールのシティもありましたが残念ながらそちらはサイズ切れ。1足だけの購入でしたがとても良い買い物だったと思います。
遊び心あるデザイン
一見普通のサドルローファーに見えますが実は細かい遊び心が入ったデザインとなっています。
それは、履き口の周りをぐるりと囲むように配された細長い革のパーツの使い方です。右足を例に取ってみると、右足の靴を外側(右側)から見たときにはこの細長い革はヒールカウンターが入っているソールにつながる革の上にかぶさるように縫い付けられています。
シームレスヒールではないため、後ろから見ると踵のちょうど真ん中に縦に革のつなぎ目が来るのですが、そこで細長い革は上下が逆転し、下側の革の内側に入り込むように縫い付けられていてアシンメトリーになっています。
文章で表現するのはとても難しいですが、粋な職人の演出といったところでしょうか。
気楽に履ける“ジョンロブ”
一番最初に買ったのがミュージアムカーフのフィリップ2でした。バイリクエストで注文していたこともあり手にした時の喜びも大きなもので、購入価格も約25万円というなかなかの覚悟だったと記憶しています。
そんなさなかに雑誌で見かけた『13万円のジョンロブ』。正直ガッカリした覚えがあります。
購入店にブラっと立ち寄った際にこのスエードのローファーを見つけ、複雑な思いはありましたが試着してみたところ足にもピッタリだったこともありすぐに購入。25万円の靴と14万円の靴では心の持ちようが変わり気楽に履くことができてとても重宝しています(それでも高いですが)。
まとめ
世界中の健康ブームもあり牛肉の消費量は年々減少し続けている現在。革用の牛は存在していないため取れる革の量も減少しています。良い革は今以上に取り合いになることは明白ですよね。革靴の価格上昇と革質低下は現在進行形で進んでおり、本当に良い革の靴を手に入れるのはもう難しい状況。この先も価格上昇と革質低は進んでいきます。今売ってる靴が将来的には一番良い靴と考えて間違いないのではないでしょうか。
靴は長く履くことができるアイテムですので、気になっているモデルがあれば少し無理してでも手に入れても良いかもしれません。
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