一時期ほどショップの店頭に全く並んでないような状況ではなくなりましたが、オールデンのコードバンの靴は依然人気が高いですよね。SNSでも自慢のオールデンをピカピカに磨き上げたり、新製品のケアグッズの紹介だったり、かっさ棒で履き皺を均すというようなテクニックも編み出されては進化をし続けています。
コードバンの靴の中でも黒やNo.8と呼ばれるバーガンディー以外の薄い色については“レアカラー”などと呼ばれており、プレミア価格で取引されるというまさにコレクターズアイテムになっている模様。先日開催された伊勢丹の靴博でもウィスキーコードバンの未使用品が30万円以上で販売をされていたようです。
自分ももう10年以上前の購入になりますが、コードバンのVチップのバーガンディーカラーを一足持っています。モデル名でいうと54321という定番のVチップのモデルですね。
モディファイドラストの54321
この54321というモデルは990や9901のバリーラストのプレーントゥや、1339や1340と呼ばれるチャッカブーツと同様の定番モデルです。
このモデルの特徴としては“モディファイドラスト”と呼ばれている矯正靴用のラストが使われているところ。これによって爪先周りは非常に楽でありながらも土踏まずをぐっと持ち上げて固定することによってコンフォートに履くことができます。
購入時は海外からのオールデンの個人輸入も盛んに行われておりましたが、モディファイドラストのモデルについては海外のディーラーでは取り扱いがありませんでした。
この靴はバーニーズニューヨークの別注品で、ウィズがCであり通常のDウィズモデルよりも細身のラストが使わています。これがまた絶妙なフィット感であり1日中履いていても痛みが無いパラブーツと同じようにスニーカー感覚で履ける1足です。
また、先述しましたがウィズに関しては定番モデルはB/Dですがこの靴はA/C。前の文字が踵の大きさを表し後の文字がウィズを指すため、踵周りも小さくなっていることでホールド感も一般モデルよりも向上。この点がバーニーズニューヨークの別注のポイントであり自分が購入を決めた理由です。
購入時から感じていた違和感
この靴を購入した時には純正のシューツリーも同時に購入しています。
シューツリーはコロニルのシューツリーと同じようなシャビーなものですが、オールデンの金属プレートが装着されることによって金額も2倍以上となっています。(本当に入れる意味があるのか分からないシューツリー)
シューツリーを靴にセットしようとしても右は入るけど左は入らないということがあり、いくつかのペアを持ってきてもらって最終的には左右で合うものをペアにして購入したという流れでした。靴が左右で個体差があるのかシューツリーに個体差があるのか。本来ではありえないことです。
購入した靴を見てみても左右でコードバンの肌が滑らかな部分もあればザラザラの面もあったりで、買った当時からあまり品質については褒められたものではないなという印象。他のショップで見かけるオールデンも大体は“そんなもの”でした。
オールデンの靴は“低品質”である
自分が購入してから数年後にオールデンのブームがありましたが、その時の靴はショップで見ても『これは・・』と思うような出来の悪いものが多かったと記憶しています。
ウェルトはガタガタで色ムラも目立ち、置いた状態で靴を動かしてみてもカタカタと左右で違う動きをするものや、ライニングへの塗料の付着、左右で色が違う、ボンドがはみ出しているといった酷いものもザラであり『よく検品をパスしてきたな・・』というレベルのものばかり。
工業製品としてはとても失格といったものばかりで、もはやクオリティコントロールが厳しいセレクトショップの店頭に置かれなくなるのは時間の問題かとも思ったものです。
品質が悪い=『味』ではない
好きになったものについては“痘痕も靨(あばたもえくぼ)”になってしまうのは仕方のないことですが、上記のような低品質のオールデンについて『作りが雑なのがオールデンらしい』とか『それがオールデンの味である』のような形で許容する向きもあります。これについてはメーカーを甘やかすだけであり誰のためにもならないのではないかというのが自分としての結論です。
セレクトショップでは数多くのインポートブランドの商品を取り扱い、さらには別注品の企画や販売もしています。仮にそこで仕上がってきたジャケットに“ほつれ”があったりステッチが曲がっていたり、本来あるべき姿ではない形で商品が納品されたらそれを『味』として売れるのかということです。
メーカーとショップの間には当然インポーターが介在するので、そこを経由してメーカーへのフィードバックと品質の向上を働きかけるという流れになるのが当然でしょうし、当然最初は『日本人の要求は細かいな』と思われるかもしれませんが、結果として自社の商品の品質向上にもつながりメリットが大きいわけですね。
コードバンでは約14万円、カーフでも約10万円。靴に興味がない人から考えればとても出せない“高級な”革靴なので、インソールに自社の名前も入れて別注品として販売しているセレクトショップにはオールデンの日本の代理店であるラコタハウスに働きかけて品質向上を訴えてほしいものです。
なお、同じアメリカ製の靴でもアレン・エドモンズやレッドウィング、ダナーの靴はどれも出来が良く個体差というものは特に感じません。生産体制が違うことはあるでしょうが、挙げたメーカーよりも品質が悪く高価であるということは甚だ疑問というわけですね。
ウィスキーコードバンの靴は普通に買える
レアカラーコードバンの中でも特に人気のカラーはウィスキーと呼ばれる薄いブラウンのもので、色が薄いことで製造が難しくごまかしが効かないから希少価値があると言われてます。
このホーウィン社のウィスキーコードバンを使用した靴ですが、ワンショットの生産ではなくカタログモデルとして常時販売しているメーカーが存在しています。
それがイギリスのクロケット&ジョーンズで、彼らはコードバンの靴の製造にも注力しておりブーツやローファー、ダービーシューズと幅広く製造しているわけですね。使用しているコードバンはオールデンと同じホーウィン社。レアカラーとの呼び声が高いウィスキーコードバンの革の使用面積が大きいブーツまでもが普通に買えるのです。
他にはスペインのカルミナ。こちらもホーウィン社のシェルコードバンを使用したモデルを大量に販売しています。呼び名は違いますが、ウィスキーやラベロ、シガーと呼ばれているカラーのコードバンに酷似したカラーの靴も数多く売られています。
さらにはグリーンや型押しなど『こちらの方がレアカラーなのでは?』とも思える商品が数多く販売中。(MTOまでできる)
当然クロケット&ジョーンズやカルミナの靴はとても丁寧に作られており、間違ってもウェルトがガタガタであったり左右差があるということは無いでしょう。定価ベースの金額でもオールデンとも大差ない金額でオールデンよりも、確実に、高品質な靴が買えるというわけです。
低品質の靴を売り続けるのはメーカーと代理店の怠慢
さて、上記のような記事を書きましたが自分自身は所有しているオールデンの靴は大切にしていますし、クロムエクセルレザーのブーツにも興味があります。また、履き心地が良いところも独特なモディファイドラストの形状も、パンツを選ばないところも優秀だと感じているわけです。
今は品薄による枯渇感やレアモデルが欲しいという人に支えられている状況でしょうが、品質が低い靴がこの値段で販売されていることで果たして新規の顧客が増えるのでしょうか。
マニアがよりレアものを競って探すようになると今まで以上に先鋭化し、代理店は定価を上げ極端に数を絞ってレアカラーオールデンを販売、徹夜組のマニアが出現し転売ヤーも登場するカオス状態になり一般人から見れば滑稽な状況になりかねないのではと危惧しています。(ラコタ丸の内店開店時は既にこの状況)
上記のようにウィスキーコードバンの靴は他のメーカーでも普通に買えますし、品質の高いアメリカ製の靴は他にもたくさんあります。ぼくも靴好きの端くれとしてオールデンの靴は好きですが、やはり価格相応の品質は担保されるべきであるし、それを日本の代理店がメーカーに働き掛けるべきだと思います。
個人輸入阻止のために海外のディーラーに日本への配送を断わらせたり、異様な価格の送料を設定するよう圧力を掛けたりする以前に、もっとクオリティの高い商品を市場に供給できる体制作りに尽力してほしいものですね。(それだけラコタはオールデンに対して力があるということ)
コメント